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神戸地方裁判所 平成6年(ワ)1529号 判決 1996年3月08日

原告

大西宏之

ほか一名

被告

保田圭三

ほか三名

主文

一  被告らは、原告らそれぞれに対し、連帯して各金七七三万八四八七円及びうち各金七〇三万八四八七円に対する平成五年七月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを二分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告らは、原告らそれぞれに対し、連帯して各金一五三〇万五〇四〇円及びうち各金一三九五万五〇四〇円に対する平成五年七月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  本件は、後記交通事故(以下「本件事故」という。)により死亡した訴外大西史子(以下「訴外史子」という。)の相続人である原告らが、被告保田圭三(以下「被告保田」という。)に対しては民法七〇九条に基づき、被告株式会社ホープ(以下「被告会社」という。)に対しては同法七一五条、自動車損害賠償保障法三条に基づき、被告横山祐昭及び被告横山洋子(以下、右被告両名を一括して「被告横山ら」という。)に対しては民法七一四条一項に基づき、それぞれ損害賠償を求める事案である。

なお、付帯請求は、弁護士費用を除く内金に対する本件事故の発生した日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金である。

また、原告らの主張する被告らの債務は不真正連帯債務である。

二  争いのない事実

1  交通事故の発生

(一) 発生日時

平成五年七月一六日午後四時三〇分ころ

(二) 発生場所

神戸市垂水区南多聞台三丁目六番二八号先路上

(三) 争いのない範囲の事故態様

被告保田が、右発生場所の道路左端に停止中の大型乗用自動車(神戸二二す四六五五。以下「加害車両」という。)を運転して右前方に向けて発進したところ、折から訴外史子が加害車両の直前に転倒していたため、加害車両の車輪が訴外史子を轢過した。

(四) 事故の結果

本件事故により、訴外史子は、脳挫滅等により、即時同所において死亡した。

2  相続

訴外史子の相続人は、父母である原告ら両名である。

三  争点

本件の主要な争点は次のとおりである。

1  被告らの責任原因

2  被告保田及び被告会社の責任の範囲

3  本件事故に対する訴外史子の過失の有無

4  訴外史子の損害額

5  損益相殺の範囲

四  争点に関する当事者の主張

1  争点1(被告らの責任原因)

(一) 原告ら

(1) 被告保田及び被告会社の責任原因

本件事故に関し、被告保田には、車両発進時の前方確認義務違反の過失がある。

また、被告会社は、被告保田の使用者であり、加害車両の保有者である。

したがつて、被告保田は、民法七〇九条に基づき、被告会社は民法七一五条、自動車損害賠償保障法三条に基づき、訴外史子に生じた損害を賠償する責任がある。

(2) 被告横山らの責任原因

本件事故の直前、訴外横山啓一(以下「訴外啓一」という。)が後ろから訴外史子を突き飛ばしたため、訴外史子は加害車両の直前に転倒し、本件事故に至つた。

そして、訴外啓一の右行為には違法性があるが、訴外啓一は本件事故当時満一〇歳(小学校四年生)で責任無能力者であつた。また、被告横山らは訴外啓一の父母であり、これを監督すべき義務があつた。

したがつて、被告横山らは、民法七一四条一項本文、七一二条により、訴外史子に生じた損害を賠償する責任がある。

(二) 被告保田及び被告会社

本件事故は、訴外史子が、発進寸前の加害車両の直前に転倒してきたために起きたもので、被告保田には、本件事故を回避する可能性はなかつた。

また、被告会社が被告保田の使用者であることは認めるが、被告会社が加害車両の保有者であることは否認する。

(三) 被告横山ら

訴外啓一が後ろから訴外史子を突き飛ばしたことは否認する。

訴外史子及び訴外啓一は、本件事故の直前、他の児童とともに「鬼ごつこ」に興じていた。そして、そこでは、逃げる者が「こおり」と言つてその場所から動かなければ、「鬼」はその者を捕えることができないというルールがあつた。

にもかかわらず、本件事故の直前、訴外史子は「こおり」と言いながらも動いたため、「鬼」であつた訴外啓一は、これをたしなめるために、「ずるいぞ」と言いながら訴外史子を普通に押したにすぎない。

そして、訴外啓一の右行為は、「鬼ごつこ」という遊戯中の行為であつて、しかも、右遊戯に通常ともなう行為に過ぎないから、違法性を阻却される。

また、被告横山らが訴外啓一の父母であることは認めるが、本件事故は、「若松塾舞子校」において発生したものであり、被告横山らには訴外啓一の監督義務者としての責任はない。

2  争点2(被告保田及び被告会社の責任の範囲)

(一) 被告保田及び被告会社

訴外史子と訴外啓一とは、本件事故の直前まで他の児童とともに「鬼ごつこ」に興じており、本件事故も、右両者の行為が直接の契機となつて引き起こされたものである。

したがつて、仮に、被告保田及び被告会社に何らかの責任があるとしても、被告保田及び被告会社と訴外啓一(又は被告横山ら)とが共同不法行為責任を負うものではなく、訴外啓一の過失は、被告保田及び被告会社との関係では、信義則上、被害者側の過失として評価すべきである。

3  争点3(訴外史子の過失)

(一) 被告横山ら

本件事故直前の訴外史子及び訴外啓一の行為は、争点1に関して主張したとおりである。

これによると、訴外史子は、「鬼ごつこ」のルールに違反し、訴外啓一は、これに誘発されてこれをたしなめるために訴外史子を押したにすぎないから、訴外史子にも過失があり、右過失を過失相殺として斟酌すべきである。

4  争点5(損益相殺の範囲)

(一) 当事者間に争いのない前提事実

被告会社は、「若松塾舞子校」を経営する訴外有限会社聖文館と契約して、同塾の送迎用バスの運行業務にあたつており、本件事故当時、被告保田も、右業務に従事していた。

ところで、訴外有限会社聖文館は、訴外三井海上火災保険株式会社(以下「保険会社」という。)と、右塾の生徒が塾の管理中又は往復途上において偶然の事故により死亡又は傷害を負つた場合、これを補償する旨の内容を含む「塾総合保険」契約を締結していた。

そして、右契約に基づき、原告らは、保険会社から、保険金一〇〇〇万円を受領した。

(二) 被告ら

右保険金は、訴外史子の死亡によつて生じた損害を填補するために支払われたものであるから、当然に、右損害から控除されるべきである。

(三) 原告ら

右保険金は、保険契約者である訴外有限会社聖文館の責任とは無関係に支払われるもので、保険会社は特約で保険代位権を放棄しており、損害賠償の性質を有しない。

したがつて、右保険金を損害から控除するのは相当ではない。

第三争点に対する判断

一  争点1(被告らの責任原因)

1  甲第一ないし第四号証によると、本件事故前後の状況に関し、前記争いのない事実の他に、次の事実を認めることができる。

(一) 本件事故の発生場所は、「若松塾舞子校」の玄関前路上である。

(二) 「若松塾舞子校」では、毎週火曜日と金曜日の午後五時から、小学校四年生のために国語と算数の授業があつた。

本件事故の発生した平成五年七月一六日(金曜日)午後四時二〇分ころ、いずれも小学校四年生であつた訴外史子、訴外啓一、訴外穴田まさのり、訴外石田みほの四名は、「若松塾舞子校」の建物内及びその周辺を舞台に、「鬼ごつこ」を始めた。

右「鬼ごつこ」は、一人の「鬼」が他の者に触れて捕えるというものであるが、逃げる者が「こおり」(「凍り」の意味)と言えば、その者はそこから動くことができなくなり、他方、「鬼」はその者を捕えることができず、これらの効果は、他の逃げる者が「こおり」と言つた者に触れるまで続くというルールがあつた。

そして、右「鬼ごつこ」においては、訴外啓一が「鬼」になり、他の者を捕えようとしていたが、その中で、訴外史子及び訴外石田みほは、「こおり」を宣言していた。

ところが、訴外啓一が訴外穴田まさのりの行方を探しているとき、訴外史子及び訴外石田みほは「こおり」のルールに違反してその場から移動し、訴外啓一は、訴外史子が「若松塾舞子校」の玄関前の歩道に立つているのを発見した。

そこで、訴外啓一は、訴外史子の背後に近づき、振り返つた訴外史子と目があつた瞬間に、「ずるいぞ」と言いながら、左手で訴外史子の左肩を、右手で同訴外人の背中を、手の指を広げててのひら全体で押した。

そして、そのはずみで、訴外史子は左前方の路上にうつぶせに倒れ、その直後、両手を地面につけて上体を起こしかけた時、折から発進してきた加害車両の左前輪及び左後輪が、訴外史子を轢過した。

(三) 本件事故直前、被告保田は、「若松塾舞子校」の二名の生徒を加害車両に乗せて同校まで送り届け、別の児童を迎えに行くために、加害車両を発進させたところ、本件事故が発生した。

なお、加害車両が止まつてから二名の生徒が降車し、再び加害車両が発進するまでの時間は、せいぜい約一〇秒間であつた。

また、加害車両の運転席からは、訴外史子及び訴外啓一が立つていた歩道を直接視認することができ、また、訴外史子が倒れていた加害車両の前面をアンダーミラーを通じて視認することができたが、本件事故時、被告保田は、後方から他の車両が来ていないことを確認したものの、自車の直前や周囲の安全を十分には確認していなかつた。

(四) 訴外史子の解剖の主要な所見は、左頭蓋底粉砕状骨折、左後頭葉挫滅、全身に多数の表皮剥脱というものである。また、直接の死因は脳挫滅とされている。

2  被告保田及び被告会社の責任

右認定事実によると、本件事故の発生場所は、「若松塾舞子校」前の路上で、かつ、同校の授業開始前であつたから、被告保田としては、停止中の自車直前に小学生である同校の生徒が飛び出してきたり、転倒したりすることも十分に予想されたというべきであり、同被告には、自車の後方から進行してくる車両の有無を確認するだけではなく、直接の目視やアンダーミラーを通じて、自車の直前や周囲の安全を十分に確認して自車を発進進行すべき注意義務があつたというべきである。

そして、右認定のとおり、同被告は、右注意義務を怠つて自車を発進させているから、同被告に過夫があることは明らかであり、同被告には本件事故を回避する可能性はなかつた旨の同被告及び被告会社の主張を採用することはできない。

また、被告会社が被告保田の使用者であることは当事者間に争いがない。

よつて、被告保田は民法七〇九条により、被告会社は同法七一五条により、訴外史子に生じた損害を賠償する責任がある(被告会社が加害車両の保有者であるか否かは争いがあるが、右判示のとおり被告会社には使用者責任が認められるから、この点については判断する必要がない。)。

3  被告横山らの責任

右認定のとおり、訴外啓一が訴外史子を押したことにより訴外史子が路上に転倒したことが認められるから、訴外啓一の右行為が本件事故の一因となつているというべきである。

ところで、被告横山らは、訴外啓一の右行為は「鬼ごつこ」という遊戯中の行為であつて、しかも、右遊戯に通常ともなう行為に過ぎないから、違法性が阻却される旨主張する。しかし、たとえ遊戯中の行為であつても、歩道に立つている他人を車道に向かつて押すという行為は、仮に押された者が転倒しなくても、それ自体が非常に危険な行為であり、ましてや、右行為が遊戯に通常ともなう行為に過ぎないとは到底言えない。

したがつて、訴外啓一の右行為には違法性があるというべきであつて、訴外啓一が本件事故当時責任無能力者であつたこと、被告横山らが訴外啓一の父母であることは当事者間に争いがないから、被告横山らは、民法七一四条一項本文、七一二条により、訴外史子に生じた損害を賠償する責任がある。

なお、被告横山らは、本件事故が「若松塾舞子校」において発生したものであることを理由に、被告横山らには訴外啓一の監督義務者としての責任はない旨も主張するが、右認定のとおり、本件事故は、同校の授業開始前におきたものであり、被告横山らが監督義務者としての責任を免れるとまでは認められない。

二  争点2(被告保田及び被告会社の責任の範囲)

訴外史子と訴外啓一とは単に友人関係にあつたにすぎないから、被告保田及び被告会社との関係で、信義則上、訴外啓一の過失を被害者側の過失として評価すべき旨の同被告らの主張を採用することはできない。

そして、数人の過失が競合して他人に損害が発生した場合には、民法七一九条により、不法行為責任を負うべき者は連帯して右損害を賠償する責任を負い、右数人の過失の内容、程度は、実際に被害者に対する損害賠償責任が果たされた後に、内部的な求償関係の問題として発生するにとどまるというべきである。

したがつて、原告らに対する被告保田及び被告会社の責任の範囲が限定されることはない。

三  争点3(本件事故に対する訴外史子の過失の有無)

争点1に対する判断で判示したとおり、本件事故直前に、訴外史子が、「鬼ごつこ」のルールに反する行動に出たことが認められる。

しかし、歩道に立つている他人を車道に向かつて押すという訴外啓一の行為の危険性及び車両発進時の前方確認義務違反という被告保田の過失の内容と対比すると、訴外史子の右行為を、過失相殺の対象とすべきほどの過失であるとは未だ認めることができない。

四  争点5(損益相殺の範囲)

争点4(訴外史子の損害額)に先立ち、争点5(損益相殺の範囲)について判断する。

1  甲第八号証、第九号証の一及び二によると、有限会社聖文館と保険会社との間の塾総合保険には、被保険者(甲第九号証の一の一丁目により、若松塾七校の塾生総数三六〇〇名とされている。)が特別約款に記載された事故のために、他人の生命もしくは身体を害したことなどによつて生じた法律上の損害賠償責任を負うことにより被る損害を保険会社が填補する旨の規定があること(賠償責任保険普通保険約款第一条)、右事故とは、若松塾七校の施設または設備によつて生じた偶然な事故及び右塾の業務遂行によつて生じた偶然な事故(塾特別約款第一条)並びに右塾の生徒の行為によつて生じた偶然な事故(塾生徒特別約款第一条)をいうとの規定があること、この場合の保険金額は、一事故につき金二億円、一名につき金五〇〇〇万円(以上、塾特別約款)または一事故につき金五〇〇〇万円(塾生徒特別約款)を限度とする旨定められていること、右規定とは別に、塾に在籍するすべての生徒を被保険者として、被保険者が、塾の管理下にある間又は塾との往復途上にある間に生じた急激かつ偶然な外来の事故によつて、その身体に被つた傷害に対して、保険金が支払われる旨の規定があること(塾生徒特別約款中、傷害担保特約条項(塾生徒用)第一条)、被保険者が右事故の日から一八〇日以内に死亡したときは、保険会社は被保険者の相続人などに対して死亡保険金一〇〇〇万円の全額を支払う旨の規定があること(同特約条項第五条)、保険会社は、右保険金を支払つた場合でも、被保険者の相続人が第三者に対して有する損害賠償請求権を代位取得しない旨の規定があること(同特約条項第一六条)、原告らに支払われた死亡保険金は、右特約条項に基づいて支払われたことが認められる。

2  そして、右特約条項のような規定に基づく死亡保険金は、保険契約者である塾と被保険者である塾生徒との間の特別の関係に基づき、被保険者の相続人に定額の保険金を給付することによつて、これらの者の保護を図るために保険契約者が締結したと解するのが相当であつて、被保険者が被つた損害を填補する性質を有するものではないというべきである(最高裁平成三年(オ)第一〇三八号同七年一月三〇日第二小法廷判決・民集四九巻一号二一一頁参照)。

したがつて、右死亡保険金を、訴外史子の損害額から控除するのは相当ではない。

五  争点4(訴外史子の損害額)

争点4に関し、原告らは、別表の請求額欄記載のとおり主張する。

これに対し、当裁判所は、以下述べるとおり、同表の認容額欄記載の金額を、訴外史子の損害として認める。

1  損害

(一) 文書料

これを認めるに足りる証拠はない。

(二) 葬儀費用

訴外史子の年齢(死亡時、満一〇歳の小学四年生)によると、葬儀費用のうち金一〇〇万円を、本件事故と相当因果関係があるものと認めるのが相当である。

(三) 死亡による逸失利益

訴外史子の死亡による逸失利益の算定にあたつては、同訴外人が一八歳から六七歳までの四九年間は、少なくとも、賃金センサス平成六年第一巻第一表の平成五年、産業計、企業規模計、女子労働者、旧中・新高卒、一八―一九歳に記載された金額(これが年間金二〇六万四二〇〇円であることは当裁判所に顕著である。)を得る蓋然性が高いものとして、生活費としてその四〇パーセントを控除し、本件事故時の現価を求めるために、中間利息の控除を新ホフマン方式によるのが相当である(八年の新ホフマン係数は六・五八八六、五七年の新ホフマン係数は二六・五九五二)。

したがつて、死亡による逸失利益は、次の計算式により、金二四七七万八五七四円(円未満切り捨て。)である。

計算式 2,064,200×(1-0.4)×(26.5952-6.5886)=24,778,574

(四) 慰謝料

慰謝料を算定するにあたつては、事故の態様、家族関係等、一切の事情を総合して判断すべきである。そして、争点5に対する判断で判示したとおり、原告らが保険会社から受領した死亡保険金一〇〇〇万円は、損害の填補とすることはできないが、被告らは、これを慰謝料減額事由として考慮すべきである旨主張するので、この点を検討する。

甲第四号証(一二丁目の自動車検査証謄本)によると、加害車両の所有者は有限会社聖文館であることが認められ、同社も、自動車損害賠償保障法三条により、訴外史子の損害を賠償する責任がある。また、甲第九号証の一によると、右死亡保険金の基礎となつている塾総合保険の保険契約者は同社であること、右死亡保険金一〇〇〇万円に対応する保険料は年間金一五六万二四〇〇円であること、右保険料は同社が支払つていることが認められる。

そして、これらの事実によると、右死亡保険金は、加害者側の負担に基づいて支払われており、事実上、原告らに生じた精神的損害の一部を慰謝するという効果も生じているということができる。

したがつて、右死亡保険金の支払も慰謝料算定の一事由として斟酌することとし、本件事故の態様、原告らの家族関係等、本件に現れたその他一切の事情をも考慮すると、訴外史子の死亡による慰謝料を、金一六〇〇万円とするのが相当である。

(五) 小計

(一) ないし(四)の合計は、金四一七七万八五七四円である。

2  損害の填補

自動車損害賠償責任保険から原告らに対し、金二七七〇万一六〇〇円が支払われたことは当事者間に争いがない。

そして、右金額を訴外史子の損害から控除すると、金一四〇七万六九七四円となる。

3  弁護士費用

原告らが本訴訟遂行のために弁護士を依頼したことは当裁判所に顕著であり、右認容額、本件事案の内容、訴訟の審理経過等一切の事情を勘案すると、被告らが負担すべき弁護士費用を金一四〇万円とするのが相当である。

4  相続

前記のとおり、訴外史子の相続人が父母である原告ら両名であることは当事者間に争いがなく、原告らは、弁護士費用を含めた合計額金一五四七万六九七四円の二分の一である金七七三万八四八七円ずつをそれぞれ相続した(弁護士費用を除く金額は各金七〇三万八四八七円。)。

第四結論

よつて、原告らの請求は主文第一項記載の限度で理由があるからこの範囲で認容し(遅延損害金の対象は原告らの主張による。)、その余は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文を、仮執行宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 永吉孝夫)

別表

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